Marie Kobayashi


小林真理江


茨城県水戸市出身

2006年
多摩美術大学美術学部絵画学科油絵専攻卒業

2010年
東京芸術大学大学院修士課程壁画研究室修了

ガラスとの出会い

私がガラスの魅力に初めて心を奪われたのは、ガラスの白鳥でした。幼い頃に家族旅行で訪れた『箱根彫刻の森美術館』で買ってもらったものです。毎日のように、ガラスが光を通す美しさとそこに生まれる鮮やかな色、滑らかなフォルムを一日ウットリと眺めていたものです。その感動が今の私の仕事に繋がっているのだと思います。

女神像との出会い

大学は油絵を専攻していたのですが、20代前半は何を描くべきか茫洋とし、自分に失望していました。そんな頃に行ったイタリアでの体験が今も心の支えです。ローマ郊外の遺跡。彫刻も風化していましたが、叢の奥に顔の残っている女神像がありました。私は女神像と見つめ合いました。像の足元に摘んだ花が添えてありました。何時間前なのか、私と同じように立ち止まった誰かがいた。そして紀元前の昔から、この像と見つめ合っていた人々を想いました。永い時間の中の自分の小ささと、無数の小さな命の存在を感じ、いてもいいよと言われている様でほっとしたのでした。そんな経験を作品にしたい、いつか誰かのそんな作品になりたい、私が作品を作る目的を見つけた旅でした。

私の活動

2010年に大学院を修了してから、アクリル絵画と、ガラスモザイク作品を制作し、百貨店やギャラリーで展示販売をする仕事を続けてきました。大学院の修了制作で作った噴水のモザイクオブジェ作品をきっかけに、パブリックアートを制作する活動も同時に行っています。パブリックアートでは、観る楽しさに加えて、座れたり、遊べたり、作品と触れ合いながら楽しめる要素を大事に制作しています。
いつか美しくて楽しい公園や庭が作れたら、と思っています。

子供との暮らしで見つけた季節の色と世界感

娘が産まれてから、アトリエに引きこもっていた暮らしが一変しました。赤ちゃんの頃は特に、寝かせたりあやしたりするために、日中のほとんどを散歩に費やしていました。アトリエを確保する為に、東京でも田畑や森のある地域に暮らしているのですが、散歩する場所が沢山あったことで、この土地に暮らしていて良かったと改めて思いました。
歩くようになれば、休みの日もあちこちの公園に出掛けて、コロナで保育園に行けなくなった時も、毎日人の少ない広い森林公園で遊びました。人生でこれほどまでに四季を感じたことはあっただろうか、というほど、森の色が、空の色が、夕焼けの雲の形が、毎日違うのを見ながら暮らすようになりました。その経験から、私の絵に「季節」が自然と登場するようになったのは大きな変化でした。